@出産 男性目線@

思い出話をひとつ。

出産。

初産を体験する夫婦にとっては、

すべての事象が未知との遭遇です。

とくに男性。

出産の当事者ではないので、

カラダ的には、全く変化がない。

だからこそ、

嫁っ子の変化に戸惑ってしまう。

例えば、

つわり。

朝起きた瞬間から、気持ちが悪い。

あんなに大好きだった白米を受け付けない。

歯磨きをしていて、吐く。

「毎日が強烈な二日酔い」

と酒飲み的な理解していたのだが、

若干違うみたい。

だから、

「大丈夫?」という言葉しか

かけてあげられない。

無力。

例えば、

お腹が膨らむ。

最近、激太り中なので、

お腹が膨らむ感覚はわかった。

でも、

「お腹を内側から蹴られる」

という体験はできない。

ちょっと

うらやましい。

出産まで、十月十日(とつきとうか)。

女性は、徐々に体が変化していき、

それと同時に母親としての芽生えや

自覚、覚悟が生まれてくるのだと思う。

徐々に。

男性の場合。

その十月十日で父親としての芽生えは

生まれるかも知れないが、覚悟はできていない。

正直、やっぱり、どこか他人事。

もちろん、

無事に生まれてきてほしいし、

嫁っこのこともものすごく心配だし、

仕事をそっちのけで、名前を考えるし、

こっそり「パパになるために」なんて本を読んだり……

でも、

体感として何も変わらないので、

実感がわかないというのが本音だと思う。

そして迎えた

わが子の出産日。

とりあえず、時系列で。

午前8時。

深夜から陣痛っぽい痛みがあったので、

朝イチで病院へ。

ところが、

寝ぼけ眼の医者様から

「まだまだですねぇ」

と軽い診断を受け、帰宅。

午後1時。

「やっぱり痛い」

と電話をして、そのまま入院。

午後2時。

今まで見たことのないほど、

血の気が引いて真っ青の嫁。

大丈夫か……。

診察を受けている間、病室内をウロウロするオイラ。

午後3時。

年末だったため、病院にはウチラだけ。

特別に分娩室で待機することに。

人生初の分娩室。

おぉ、あの足を広げる台がある……。

へぇ〜結構、デカイんだぁ……。

などと思う余裕もなく、

その分娩台に横たわる嫁っ子に近づく。

……ビニール袋で息をしている。

看護婦さんが

過呼吸を抑えるためですよ」

と教えてくれた。

さらに、

「じゃあ、お父さん、呼吸に合わせて

腰のあたりを押してあげて。楽になるから」

お、おとうさん?

は、初めて、お父さんと言われてしまった……。

でも、助産婦さん、

ちょっと待ってくれ。

出産直後。

生まれたばかりの赤ん坊を

抱きかかえた助産婦さん。

感動で立ちすくむオイラに向かって、

「元気な男の子ですよ、お父さん」

そう、このタイミング。

「祝・初お父さん」

は、このタイミングで言われたかった。

などと思う余裕もなく、

あっさりと「お父さん」を受け入れ、

一心不乱に腰を押しだす。

それから3時間30分。

ひたすら腰を押す。

本当にあっという間でした。

午後7時。

「そろそろ産んじゃおっか」。

先生の軽い一言で、出産が始まった。

「じゃあ、お父さんは病室に戻ってくださいね」

実は、入院時の事前アンケートにて、

「立会い出産を希望していない」

と回答をしていたのです。

これは夫婦で決めたこと。

「がんばれ」と声をかけて、分娩室を出る。

で、病室に戻り、

フーと息を付きながら椅子に座った。

そこに、なぜか助産婦さんが登場。

そして、一言。

「立会い、どうなされますか?」

これは断れない。

朝から嫁っこの頑張りを見てきた。

今まで見たことのない顔をして……

ビニール袋で息をしている姿を見て……

陣痛の波にあわせて、悲痛の声を上げて……

助産婦さんの一言で、

妊娠から今までの出来事が一気にフラッシュバック。

しかも、

そのフラッシュバックには、嫁っこの頑張りしかない。

オイラは何もしていない。

これでは父親として、出産をわが子に語ることができない。

立会い出産。

男として出産に携われる最初で最後のチャンスだ。

断る理由が見つからない。

「行きます」

助産婦さんの後を、

颯爽と歩く。

オイラはお父さんになる!

このとき、やっとお父さんになる

覚悟ができたと思う。

そして分娩室の前に立つ。

さっきまで腰を押し続けていた部屋だ。

でも、空気が違う。

な、なんだ、この緊張感。

ピリっと張り詰めている空気の中、

簡易白衣を着るように命じられる。

だが、

緊張で上手く着れない。

確実に

お父さん待ち。

わが子よ、不器用な父でスマン。

なんとか着衣が終わり、

分娩室に中に入ると、すでに嫁っこが格闘していた。

「ヒーヒーフー」

あぁ…ヒーヒーフーだぁ……

などという感傷にひたる暇もなく、

「ほら! お父さんもっ! 一緒にやんなさい!!」

助産婦さんの怒号に近い叫び声が……。

さっきの

「立会い、どうなさいますか?」

の優しさはどこにいったんだ。

そして、

間髪いれずに

「お父さんは、お母さんの頭を抑えて! あごを上げちゃ駄目。

おへそを見せるように!」

「は、はいっ!」

約40分後。

午後7時55分。

長男誕生。

嫁っ子の体から、わが子の頭が出てきた瞬間から

記憶があまりありません。

無我夢中。

後で聞くと、嫁っ子は冷静だったみたいで、

分娩台の横で狂喜乱舞している旦那に対し、

「あ〜あ」

と思っていたらしい。

まぁ、いい。

そんなふうに思われていたとしても、

立ち会って良かった。

わが子に対する愛情が芽生えたのはもちろん、

嫁っ子に対する愛情の質が変わった。

出産は

嫁っこの本気が見れます。

女性としての本気が見れます。

この本気、感動です。

そして、分娩室には

静寂が訪れます。

響いているのは、

わが子の泣き声だけ。

子どもが生まれて、

産声を聞いた瞬間の安堵感。

人生最大の安堵感かもしれない。

といわれても、

出産未体験の方にはわかりづらいと思うので、

比較で語ってみたいと思う。

電車に乗っていて、急な腹痛に襲われた。

慌てて電車を飛び降り、駅のトイレへダッシュ。

運良く個室が空いていたが、

ズボンのベルトが上手く外れない。

迫りくる便意。

肛門から顔を出しているであろう、うんこ。

もうやばい。

と思った瞬間、ベルトがはずれ、

パンツと一緒にズボンを足首まで一気にトレースし、

便器に向かって尻を突き出しながら、大量にスパーク!

すっと消える便意。

開放感に満たされるお腹。

「もらさなくて、良かった……」

このときの安堵感の

数千倍とお考えになって頂きたい。

うんこの数千倍です。

さて、

その出産直後。

病院からの指示もあり、

嫁っ子は、分娩台で安静にしている。

約2時間。

この2時間が、最高なのです。

さっきまでの喧騒はどこ吹く風。

シーンと静まり返った分娩室。

そこには、

無事に出産を終えた安堵感と

わが子と対面できた喜びにあふれている

嫁っこが分娩台で寝ている。

そこに

立会い出産という戦いを終え、

「母子ともに健康です」との報告を受け、

うんこの数千倍の安堵感を身にまとったオイラが近寄る。

「おつかれさま」

「うん…」

「大丈夫?」

「うん…」

「無事で良かった…」

「うん…」

会話はこんなもん。

立ち会ったからこその会話。

この2時間に

言葉はいりません。

嫁っこの頭をなでたり、

手を握ったり。

それだけで伝わる。

立ち会わなければ、

この濃厚な2時間は体験できません。

嫁への愛情が確実に変わります。

この2時間のために、

ビバ、立会い出産。

しかし、

病室へと戻った瞬間に、現実が待っているのです。

明日から始まる

赤ちゃんのお世話。

授乳や沐浴。

首も腰も据わってない、ふにゃふにゃの赤子。

抱っこするのも、おっかなびっくり。

あ〜、どうしよう……。

嫁っこも

不安になっているのだろう。

お互い初めての体験だ。

ふと

嫁っこを見てみる。

ベットでうつ伏せ寝をしながら…

「うつぶせ、最高! 疲れたから、もう寝るわ。

そうそう、分娩室でも言おうと思ってたんだけど、

洗濯物干しっぱなしだから、取り込んでたたんでおいて」

時刻は、23時。

分娩室での2時間は幻想だったのか……。

あの素直な「うん……」は……。

これが現実だ。

参考記事

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